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亜子に言われたことがある。
「あんた達二人とも、無自覚にいちゃついてる」と。
そんなの見せられたら、ああ付き合ってるのねと周囲に認識され、恋愛が始まる可能性もなくなるよ、と。
それ以来、それなりに気を付けて来たつもりだけれど、今まさにこれがそうなのでは?
「えーそうなの?」
のんの呑気な返事。
続いて欠伸混じりに耳元でこそっと言われた言葉に、一気に目が覚めた。
「んじゃ、やばいじゃん。唯くんに見られちゃって、勘違いされたかも」
え、、えーー!?
唯くん!?
同じバスに乗ってたの?
「え、気付いてなかったの。始めからいたよ」
どこ、どこ!!
「すぐそこ。灯台もと暗し、ってやつだね」
のんの視線の先、顎でくいっと示された先を見ると、まごう事なき愛しの唯くんが、座っていた。
距離にしておよそ2メートルくらいだろうか。
ええーー、こんな近くにいたの?
もう、言ってよお!!
しかも、こっち見てる!
私のダイスキな、切れ長の流し目で見てるよお、見てる!!
ああ、、でも、よりによってこんな時に見てなくて良かったのに…
追い討ちを掛けるように、恐らく百面相であった私とそうやって目が合い、けれども興味無さげにその視線をフッと逸らされた。
え、、、嘘。
「どっちにしろ、彼にはどうでもいいことみたいだね」
どんまい、とのんに頭をぽんぽんとされ、茫然自失のままバスは大学正門前に到着した。
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