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31 先祖神との約束
好きになった女とは長続きしなかった。縁がなかったと諦めた。そんな事が二度三度とあって、友だちの姉に誘われたが、試験が近い日だったため断ったら、それっきりになった。
後日、彼女は見合いしたばかりで如何するか悩んでいた。その事を俺に話して相談したかったことを後で知った。彼女を助けてやれなかった事に(俺は勝手にそう思っていた)俺は悔んだ。
なぜなら、彼女の事が気になって試験は手につかず、結局、単位を取れなかったからだ。こんな事なら彼女の話を聞いて悩み相談にのれば良かった、と思った。そうすれば俺の現在は変っていたはずだ。
彼女のことがあったその後も、好きになった女とは長続きしなかった。
しかし、親しくなった女には好かれた。愛嬌があって可愛いし、しばしば会っていっしょに出歩いた。だが、妹みたいな感じで、それ以上の感情がわかない。そんな事が何度も続いた。そして、現在に至った。
『なぜ俺は、好きになった女とは縁がないのか・・・』
『お前、人生が何かと悩んだあげく、人助けしたい、と約束しただろう?
だから、自分の欲を満たす前に、人助けじゃよ。
お前を必要とする女と共に暮せ。うまくゆくぞ』
『アンタは誰だ。何者だ?』
『お前の先祖神だろう?そんな事も忘れたんかいな?
受験勉強にゆきづまったお前を、儂が助けてやったじゃろう?
あの時、お前、儂と約束したぞ!』
『そういわれれば・・・』
俺はなんとなく、そんな事があった気がした。
『それなら、出てゆけと言っている女と、早く助けに来てくれと言っている彼女のどっちを選べばいいんだ?』
『バカめ。何をほざいとる。今、出ていったら、お前も女も生活に困るじゃろう?それくらいの事がわからんのか?
彼女には口うるさくても親が居る。物わかりの良い親戚も居るぞ。
ほれ、これだけ言っても分からぬなら、これを見るがいい・・・』
俺はなぜか、エンジンがかかった車の運転席に居た。停車しているはずの車がゆっくり前進した。ギアがドライブになっている。ここはガレージだ。俺は慌ててギアをバックにした。車がバックし過ぎたので、またドライブに入れた。すると車は前進して、駐車している車に接触した。
『バカめ、ブレーキを踏めばいいじゃろに!
今、お前がやってるのは、その車と同じじゃ。
早うブレーキを踏んで、誰がお前を必要としとるか見極めて、ハンドルを握って車を動かせ!』
俺は夢から目覚めた。
(了)
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