34 絆

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34 絆

 ゆふこからメールが来た。 「緊急に連絡欲しい」  とある。またかと思った。  急ぐならゆふこが直接電話してくればメールを書く手間が省ける。そう思いながら電話する。 「もしもし」  ハスキーなゆふこの声が聞こえる。  この声だけでゆふこの姿が目前に浮かび、頼られているのを実感する。  結局さんざん聞かされ意見を求められた。  どういう意見かって?  もちろん、こういう女の定説、恋愛談義さ。  こういうと格好よく聞こえるが、実際はゆふこの付き合う相手について、私が意見を求められているのだ。  だいたい、ゆふこの行動パターンは決まっている。  さんざん好き勝手して、どうしようもなくなると私に連絡して意見を求め、あなたの考えたとおりに行動するといってしおらしくなり、さめざめ泣く。 「悲しくて泣いてるんじゃないの。あなたに優しくいわれると言葉のかわりに涙があふれるの」  私をほろりとさせる言葉だ。  最初のころの電話で、すすり泣きを風邪といってごまかしていた。二度目三度目で泣いているのがはっきりした。  だが、何度も同じようなことがつづくと、多少なりとも呆れてくる。  だからといって私はゆふこを嫌っていない。好意以上のものを彼女に感じている。それを知ってか、ゆふこは私になんでも話すようになった。そして電話代がいっきに増えていった。  何度も電話番号を変えメルアドも変えた。  事務所の電話番号を知っているゆふこは、携帯の番号とアドレスを調べ連絡してきた。  私はゆふこの自由奔放さが好きだ。容姿も好きだ。愛しているといって過言ではない。  だが、何かが少しずつ変ってゆくのがわかった。  私は心の中にある剣を鞘から抜いた。先祖から心に受け継いだ魔除けの剣だ。 「無上霊宝神道加持」  九字を三回唱え、ゆふことの悪しき絆を十握の剣で三回断ち切った。  数日後、ゆふこから電話が来た。 「あたし、これから、大切な人と話したいことがあるんです。  一度、本音で話したほうがいいいですよね?」  いつものもったいぶった様子がない。いきなり論点を話すような口振りだ。本命を見つけたか。 「ああ、そう思うよ。早いほういいだろうね」  私がそういうと同時に、 「わかりました」  ドアベルが鳴り、事務所の階段を登る音がしてドアが開いた。 「来ちゃいました!」 (了)
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