26人が本棚に入れています
本棚に追加
「大丈夫だよ、ガク。この方は常連さんだから」
優しい声で、マスターが手招きする。
遠慮がちにカウンター内へ入ってきたのは、ふわふわパーマのナチュラルマッシュで、大人しそうな顔をした男の子。身長は私と同じくらいかな。線が細くて、文系男子という雰囲気だった。
「バイトを雇ったんですか?」
「兄の子どもなんですよ。春に大学を卒業したのに、働きもせずフラフラしているから、とりあえずここを手伝わせていて……ほら、ガク。ご挨拶をして」
マスターに促されると、ガクと呼ばれたその子は軽く頭を下げた。
「武内雅空です。はじめまして」
「はじめまして、上條彩女です。大学を卒業してってことは……23歳くらい?」
「はい、今年23になりました」
あまり低くない、静かな声。控えめな感じがするけれど、笑顔は柔らかくて人懐こい。
「ガク。彩女さんは、半年くらい前から通ってくださっているんだよ」
「そうなんですね」
武内くんが、またふわっと笑った。特別美形というわけではないけれど、少しタレ目で愛嬌があって、かわいらしい顔立ちをしている。まだ若いから、やっぱりお肌が綺麗だな。
最初のコメントを投稿しよう!