8.第5回!エクレア同盟

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8.第5回!エクレア同盟

  <第5回 エクレア同盟会議> 「やっぱりサリオンと付き合っているのかしら?」 「お似合いよね」 「アナベルさん、密かに気になってたのに……」 「お前じゃダメだって!」  ある日の放課後、テラス席の一部をじっと見つめながら噂話をする生徒たち。  バラが咲き誇る庭園で、見目麗しい男女が悩ましげに話し込んでいた。遠目から見ると、まるで絵画のようだった。  会話は一切聞こえておらず、噂好きの生徒たちは「どんな話をしているのかしら」「きっと社会情勢について議論を重ねているのよ」などと想像を膨らませていた。実際は、 「精力剤をオジさまに盛るのはどう?」 「犯罪スレスレの発言はやめてくれ」  真顔で言うアナベルに、片手で頭を抑えた。 「だって! 絶対にいい雰囲気だったのに! 手も繋がずに帰ってきて!」 「言いたいことは分かるけど、」 『星降りの祭り』で母とクライドをこっそり尾行していた自分たちである。  正確には真面目に尾行していたのは自分だけで、アナベルは屋台や催し物に目移りしていた。  2人がランタンを持って人気のない方へ歩いて行ったときには、見合わせてガッツポーズをした。流石に後をつけたらバレてしまう可能性が高かったため、ランタンを売っているテントのあたりで喋りながら待っていた。  そして1時間くらい経った頃、帰ってきた彼等を見て愕然とした。  絶対にいい雰囲気になったと確信していたのに、まるで甘い雰囲気がなかった。なんなら紅茶専門店で別れた時と変わっていなかった。手くらい繋いで帰ってくるだろう予想していた自分たちは大きく肩を落とした。 「エレオノーラ様に、好意は持ってるはずなのよ」 「そうなの?」 「えぇ、第二騎士団の団長でバツイチ。カッコよくて、体も鍛えていて、性格も温和。他の女性が放っておくと思う?」  大好きな身内とはいえ、ものすごく褒めるなと苦笑しながら、自分は「思わない」とだけ答えた。 「でしょ? でも言い寄られるたびに、断り続けていたの。『曖昧に返事をすると後々面倒だから』と言って、あのオジさまにしてはビシッとね」 「そうなんだ」 「だけどエレオノーラ様にはお仕事を任せたり、一緒にお祭りを回ったり、あきらかに他の女とは違うのよ」 「だからきっかけがあれば、なぁ」と悩ましげに頬杖をつくアナベル。  そのきっかけが「精力剤」なのかとは思ったが、黙っておいた。 「結局、僕たちができるのは見守ることくらいってことか」 「そうね」  ふうっと軽く息を吐く。  もうすぐ日が暮れそうだった。「暗くなる前に帰ろう」と声をかければ、アナベルは微笑んで立ち上がった。  バラ園を眺めながら話しかける。 「お祭り、楽しかったな」 「えぇ! あんなに屋台があるなんて知らなかった!」 「焼き串、5本も食べてたもんね」 「だっておいしかったんだもの」  小さく頬を膨らませながら言うので、くすくす笑う。  その細い体のどこに入るのだろうと驚くくらい、アナベルはよく食べた。口の端に焼き串のソースをつけながら、おいしそうに頬張る姿は可愛らしくて、クライドと母親の姿を一瞬だけ見失った。 「また行きたいね」 「きっとあの2人は来年もくっついてないから、行くことになりそうね」  冗談混じりに言うアナベルに、自分はうっすらと笑った。  ーーこの同盟が解消されたら、もう一緒に行けないのだろうか。  ふと湧いた疑問は、口に出さなかった。
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