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まだ既読がつかない。
一体何万年ハエかゴキブリと格闘しているのか。
あの詐欺男のミッションは延期したが、桔梗は他のチームの応援に駆り出されて忙しかった。もう10日が経つ。どうせしょうもない言い訳をするのだろうから放っておいたら、いまだこうだ。
あれほど優先順位をうるさく言ってきたのに。てか、そんなこと言わなくたってわかりなさいよ!
イラつく思いを空気に流した。感情排除は得意だ。窓を開け、外気とそれを入れ替える。
電話が鳴る。部長からだった。
「美鷺のアパートに行ってみたがいないんだ。行きそうなところ、心当たりあるか?」
社宅などというものはない。暗殺隊がひとところにいては何かの折に全滅のリスクが大なので、点在させた借り上げ寮にそれぞれ単身で入っている。
桔梗は息をついた。美鷺が暇を見ては近くの裏山で野の花採取をするのは知っている。それを桔梗のところへ持ってくるのだ。桔梗が嬉しい顔をしたことなど一度もないというのに。
「過去の仕事絡みで恨まれたり狙われたりがないとも限らないからな。念のため行ってみるわ」
「あたしも行きます」
もう夜も更けてきたが、部長は夜目の力が強いので頼ることにする。
桔梗が想像するに、また冬の一番花か何かを見つけて夢中になって。きっと悪気なく「ねえこの花あげる!」とそれを掲げるのだ――
が、2人が見つけたのは、蛆がわき、あちこち獣についばまれた様子の、顔もわからなくなった死体だった。
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