割れないシャボン玉

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 逃げた。  ボクシングジムから出てすぐに仕留めないと、そいつの帰宅ルートは人混みの商店街や駅前しか通らない。そこへ紛れ込まれる前に、人目のない建物前で。まず吹き矢の毒で痺れさせ、動けなくさせる。  はずだった。 「わっ!」  3人チームだった。吹き矢係、仕留め係、運搬係。  ところが、吹き矢が飛ばない。  仕留め係の桔梗(ききょう)と運搬係の(れん)は、サンタの衣装で待ち構えていた。季節柄、最初相手は気に留めなかった。が、サンタ同士が顔を見合わせたこと、その後ようやく飛んできた吹き矢が逸れたこと。それで気づかれ、逃げられ、路地に追い詰めたものの。そいつは筋肉オタク。2人の身の軽さ速さが勝るとも、重量的に不利。蓮が拳を食らって吹っ飛ばされた。  煙幕。続いて投げナイフ。高々と空に飛んだ桔梗の放った複数のそれが、そいつの腹に突き刺さった。そこで不測の事態は予定の軌道へ戻る。    このミッションは、ある会社員が自死、その家族の依頼だった。彼は出世頭の営業マンだったがミスで多大な損害を出した。が、それは同期だったこの筋肉マンが自分の失敗をなすりつけ、それで発症した鬱が原因だったという。    仕留めたそいつを手早くサンタ袋に詰め込む。腕力と持久力に長ける蓮は、さっきの衝撃を持ちながらも軽々背負い数キロ走って沼へ直行、廃棄。  以上。
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