先生、最高っ!

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先生、最高っ!

「はぁ……イプ先生の漫画、今回も最高だった……」  薄い本を閉じる。表紙の男の子がカッコいい顔で私を見ていた。  私の趣味は漫画を読むことである。中でも特に好きなのはイプという同人作家さんだった。  話と絵が本当に好きで、新刊を出したらすぐに買っていた。イベントは遠くて行けないから、通販でしか買えなかったけれど、一冊も逃したことはない。 「私にもこういう話が書けたらよかったのにな……」  読み終わって余韻に浸っていると、お決まりの感情が出てきた。暗くなるのはイプ先生に失礼だと、すぐに消し去ったけれど。  私は元々、小説を書いていた。イプ先生のような話が書きたくて、でも絵は描けなかったから文章ならと書き始めた。  最初は楽しかった。けど、たくさん書いても上手くなれなくて、評価もされなくて、結局辛くなって辞めてしまった。  その頃は、小説だってたくさん読んでいた。けれど、今は辛い気持ちを思い出してしまうからと、読まないようにしている。  そんなある日だった。
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