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ハメ外す。
そんな楽しそうなワードに少しだけワクワクした。
優等生なんてなりたくてなった訳じゃない。
生徒会長だって、狙ってたのは自分のためじゃない。
自転車の後ろに横に足を放る様に乗って手は後ろの座る所を掴んでいた。
すると蒼くんに手を掴まれて引っ張られ、バランスを崩して自動的に腰に抱きつくような形になる。
「わっ」
「ちゃんと腰に掴まってて、落とされても知らないよ」
そう言って笑うと、軽やかに自転車を漕ぎ出した。
誰かに漕いでもらう自転車に乗るなんて初めてだった。
男の子に抱きつくなんてことも。
すごく暖かくて、少し安心する。
「風、気持ちいい。」
そう呟く声は、蒼くんには届いてなかった。
本当はダメだけど、すごく楽しい。
ずっと、こんな風にしたい事をして自由に過ごしてみたかった。
蒼くんもしたい事をして窮屈な生活に抗ってるんだ。
こんな風に私に寄って来てくれる人なんて居なかったから、朝からこんな風に誰かと通学するなんて初めて。
ましてや昨日入学してきた後輩の男の子が初めての相手になるなんて。
蒼くんのこと何もわからないけど、この二人きりの空気感嫌じゃなかった。
危険だと思ってるのに、今だっていけないことに誘われて良くないって分かってるのに。
でも私の知らない景色を見せてくれそうで、楽しませてくれそうで。
一緒に居て心地良いこの人のこと、もっと知りたい。
私の意識はまだ出会って1日目にして変わりつつあった。
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