僕の小さな恋人

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僕が、意識を失っている時のことだった。 恐ろしいほど白く輝く衣を着た方が 〖 わたしは主。あなたを癒す者である 〗 その輝く方が、僕の頭に手を触れた。 すると僕の頭の痛みが、霧のように消えて無くなった。 僕が、意識を取り戻すと、山川君と空手部の選手たちがいた。 「 大丈夫か? イエス様、イエス様、瑠璃ちゃん、瑠璃ちゃんって、言っていたよ 」 「 イエス様らしき方が、現れてくださったんだ。 わたしは主。あなたを癒す者である。 そう仰ったんだ。そして、僕の頭に手を触れてくださったんだ。 イエス様だよね 」 「 あぁ。そうだよ。良かったな! 」 山川君が、僕の手を、両手で包んだ。 山川君には、両親がいない。祖父母に 育てられた。小さな頃から、教会に通っていたと言ったことがある。 そこに、担当のドクターが来てくださった。 「 二週間くらい、入院して、検査をします。良かったですね。命拾いしましたね 」 「 先生、十月に、全日本大学空手道選手権があるんです。山上君の体力は回復して 試合に出られるでしょうか? 」 山川君か、訊いた。 「 体力が、元に戻れば大丈夫です 」 ドクターは、三十代の爽やかな顔だちの いかにも、エリートと云う感じのドクターだ。 「 空手、懐かしいな。僕も空手道場に通っていました。小学生の頃です。でも腕を痛めてしまって、それ以来、空手は止めました。 皆さんは、張り切ってください。 K大学は、空手、柔道、剣道の、名門校ですからね 」 そう言って、部屋を出た。 「 大丈夫だよ。必ず回復するよ。僕は、信じている。山上君は、前よりずっと逞しくなるよ 」 山川君の言葉に、思わず涙が出た。
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