僕の小さな恋人

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お婆さまは、大丈夫だろうか? 「 お婆さまはね~ あの年で、お前より早く回復しているよ。眠っていらしたからね。 都市ガスは、空気より軽いからね お前は立っていたから。苦しかっただろうね。 やっぱりお前は、立派だよ。 瑠璃ちゃんのお祖父さまが、鍼を打ってくださった。そうでなければ、今、生きていないよ。 お前が、産声をあげた時、嬉しくて、嬉しくて、お父ちゃんと二人で泣いたんだよ。 こんなに立派に育って、私も、お父ちゃんも、幸せだよ 」 二、三日後、母だけが来てくれた時に、母は、泣きながら言った。 それから、三日後、瑠璃ちゃんのお祖父さまが、来てくださった。 あの時、先生は研修でいらっしゃらなかった。 「 大丈夫かな? さすがは健司君だね。素晴らしいな! 私にはできないことだ 」 「 先生が、鍼を打ってくださったお蔭です。 ありがとうございます 」 「 あ~ あの時は、産婦人科の先生に、お腹の中で死んでいる。そう言われて、鍼を打ってもいいですか? と、訊いたんだ。 先生は、なんでもいいから、お願いいたします。 そう仰った。産まれてすぐに、鍼を打った。心臓を活性化するつぼに。 そうしたら、おぎゃ~と泣いた。嬉しかった。命は大切だ。嬉しかった、嬉しかった。 その赤ちゃんが、大きくなって、こんなに 立派に育った。 普通の人にはできないことだ。 有難いことだ。本当に。本当に 」 先生も、泣きながら仰った。 僕は、産まれてこれたことが、嬉しかった。産まれてきて良かったと、しみじみと、思った。
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