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あなたの部屋は、一見変わっていない。前に来た時から、ここにあなたがいないということを除けば、なにも変わっていなかった。
あなたが帰ってくる前に、ここに来てあなたの帰りを待ったことも何度かあった。けれど、その時とも違う。
全く別の世界だった。もうここにあなたが帰ってこないという事実だけでこんなにも見え方が、感じ方が変わってしまう。
あなたは、それだけ大事な人だった。
あなたの生活の欠片を集めていると、自然と涙がこぼれる。
あなたがいた頃は、あなたの欠片を集めることは、私にとっての幸せだった。それは、変わりようがないことのはずだった。それでも、たった一つの知らせが、一変させた。
楽しかったはずの思い出も、少し可笑しな失敗も、切ない記憶に変わっていた。
前にプレゼントした服も食器も時計も、残ってる。新品ではなくなっている。どれも、使われた形跡が残されっている。それは、嬉しいはずなのに、どこか寂しく感じる。
あなたの許可も取らずに、漁るのは、あなたとの関係を踏まえてもいけないことをしているみたいだ。
心の中で謝りながら、鍵のかかったあなたの机の引き出しをあけた。
そこには、あなたの記憶が集められた、アルバムが一つだけ入っていた。
私の知らないあなたは、やはりここにいた。
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