第二話

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「そう簡単に乗り越えられるようなもんじゃないさ。あの写真が公開されてから、手記を出版するまで一年と経っていない。『イジメられていた』という事実の方が疑わしいな」 「そうなると、何か別の動機でもあるんでしょうか?」 「いや、そうじゃない。お前はさっき『証拠も揃っている』と言ったが、証拠は揃えられた物だったのかもしれん」 「伊藤涼香は嵌められたと?」  川島は、否認することにも疲れて机に伏せたままの伊藤に視線を戻した。 「まあ、可能性の話だがな。もう一度、その『証拠』を見直してみるか……」  比嘉はそう言って川島の肩を叩き、部屋を出た。  ワインボトル。指紋無し、毒物の混入無し、入手経路不明。  涼香が使ったと思われるグラス。指紋無し、毒物の混入無し。  被害者が使ったグラス。被害者の指紋有り、テトロドトキシン検出。  伊藤涼香のDNAが検出された歯ブラシ。  被害者のツイッターに投稿された動画。  伊藤涼香宅からアクセスされたネット上の記録。 「現場に無かった物は何だ?」
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