第二話

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 捜査本部が設置された会議室の中で、何度も目を通して手垢の付いた資料ファイルを眺める川島に、比嘉が言葉を投げた。川島にとっては慣れた質問だ。比嘉は事件の度に、遺留品以上に「現場に無い物」が重要だと言っていた。 「犯人の指紋。それから、被害者の携帯電話、ですね」 「何故携帯が無い」 「そりゃあ、犯人が持ち去ったとしか」 「何の為に」 「自分と会っていた証拠を残さない為にでしょう?」  川島がそこまで答えると、比嘉は自分のスマートフォンで被害者のツイッターを開いた。比嘉のスマートフォンに、捜査本部で流された動画が流れる。 「証拠、残ってるじゃねえか」 「それは被害者のスマホがロックされていたんじゃないですか? ログインパスワードか、携帯の暗証番号が分からないと投稿は消せませんし」  川島の言葉を聞いた比嘉は捜査資料を捲って、川島の目の前に広げた。
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