プロローグ

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「彼女がどれだけの心の傷を負ったか想像を絶する。自業自得ですよ」  テレビの中で女性のコメンテーターが、憤慨しているとは思えない平坦な表情でそう断じた。コメンテーターの背後には、インターネットに投稿された女子生徒の画像が大きく映されている。女子生徒の両目に引かれた黒い帯は無意味だ。今や加工前のその画像はネット上のあらゆるサイトに溢れている。 「それはそうでしょうが、余りにも容赦がない。こんな仕打ちをやられたのでは、私達が存在する意味がありません」  番組司会者を頂点にハの字に並べられた椅子で、先に発言した女性の向かいに座っている弁護士の男がそう返して溜息を吐いた。 「この弁護士さん、あなたと同じこと言ってるじゃない」  麻美が比嘉の湯呑に茶を注ぎながら、おかしそうに言った。刑事と弁護士の意見が同じだったことが、意外だったようだ。 「別におかしくはないだろう。真実を明らかにして、公正な眼で裁き、罪を償わせる。最後の目的は同じだ。その点で、このイジメをした子供たちへの仕打ちが公正じゃないって俺は言ってるんだ」  比嘉もまた溜息を吐き、箸で摘まんだ海苔を飯の上に乗せて食事を進めた。 インターネットで写真を公開した生徒と、イジメを実行した生徒はそれぞれ別の生徒だった。
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