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「いや、そういうわけじゃないですけど……。あ、脇坂さんです」
川島のスマートフォンの画面は、大迫がカメラ側に置いてあるグラスに自分のグラスをぶつけた所で止まっていた動画から、着信を知らせる画面に切り替わった。
川島は電話をデスクの上に置いたままスピーカーにして受けた。
「川島君、今いいかな?」
「ええ。警部もいます。スピーカーです」
「例の、ルーターのログに残されていた端末の件ですが」
伊藤涼香の部屋から押収された無線ルーターに残されていた事件発生当時のログには、伊藤涼香の部屋から発見されなかった機器からのアクセスがひとつあった。加えて、伊藤涼香が現在使用しているパソコン、スマートフォンからは、「涼香」のツイッターアカウントも、大迫と連絡を取った形跡も見られなかった。
「アクセスされていたのは、三年前に発売されたA社のスマートフォン。最初の持ち主は都内に住む学生ですが、一年前に中古店に売却。そのまま同店舗で売られたのが先月。売られた日時は店側の記録に残っていますが、購入した客のデータ、防犯カメラの映像は残されていません」
「そうか。ご苦労さん」
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