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川島は比嘉に短く敬礼をすると、そのクライアントがインストールされているパソコンを取りに、比嘉を追い抜いて階段を駆け下りて行った。
取調室に入って来た比嘉に、耳元で「何も話しません」と囁いて所轄の刑事が席を譲ったが、比嘉は椅子に座る前に伊藤涼香に頭を下げた。
「伊藤さん、申し訳ない。犯人を捕まえる為にお伺いしたいことがあるのですが、ちょっとよろしいですか?」
新たな人が入ってきた気配にも顔を上げなかった伊藤涼香が、比嘉の「犯人を捕まえる為」という言葉で顔を上げた。額には赤く腕の跡が残っている。
「……何ですか?」
比嘉は「ありがとうございます」と一度頭を下げて、椅子に座りながら無線ルーターのログをプリントアウトした紙を机の上に置いた。
「このアンダーラインを引いてある部分。スマホからのアクセスですが、私はこれがあなたではない、他の誰かだと思っています。もっと言えば、大迫和馬殺害に関与した人物だと」
伊藤涼香は、机の上に置かれた紙を手に取った。十二桁の十六進数が並んでいる。
「こんなの見せられても、私には分かりません」
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