第二話

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「そうですね。重要なのは、最初にアクセスのあった七月二十日。この日の少し前ぐらいに、ネットでの不審なやり取りはなかったですか?」 「不審な?」 「ええ。無線ルーターにアクセスするには、パスワードが必要になります。誰かにパスワードを教えたことはないですか?」  比嘉の質問に、伊藤涼香は間を開けずに首を横に振った。 「教えるも何も、私はそんなパスワードなんて知らないですし。最初の設定も弟にやってもらいました」  その答えを聞いて、比嘉の隣に立っていた所轄の刑事が身を乗り出した。 「弟さんは今……」  所轄の刑事が口を開いたが、その言葉は比嘉の手で制されて途中で止まった。そして、比嘉のその手は続けて資料の別のページを開いた。押収した伊藤涼香の無線ルーターの写真が印刷されている。 「これが伊藤さんの部屋にあった無線ルーターの親機本体です。ここに貼られてあるシール。見えますよね? ここに書かれている文字列がアクセスする為のパスワードです。弟さん以外にこれを見た可能性のある人物、いらっしゃいませんか?」
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