第二話

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「伊藤さん。スマホが戻ったら操作して頂きますが、一応机の上に置いた状態で、私にも見えるようにお願いします。証拠品は無実の証拠にもなり得ます。その証拠が改ざんされた物ではないという証明の為にご協力願います」  比嘉の丁寧な物言いに、伊藤涼香は頷いた。  刑事にとっては、捜査段階での証拠隠滅や逃亡を阻止する為の手段が逮捕であり、容疑者逮捕の後にも捜査は続く。だが、世間では逮捕されれば犯人と認識される。そのせいで誤認逮捕という法的に見ると不可解な用語までできた。その誤認逮捕された多くの容疑者は、伊藤涼香のように協力的な態度を取らない。警察に対する怒りが先に立つのだ。  比嘉は大人しくスマートフォンが届けられるのを待っている伊藤涼香を見つめた。手錠は外されているが、腰紐は自身が座るパイプ椅子に縛り付けられたままだ。そのことに対しても何ら苦情を申し立てないのは、今回の殺人事件については直接関与していないと言っても、その原因となった五年前の騒動に対して罪悪感を覚えているからではないかと推測していた。 「比嘉警部」
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