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保管庫から封をされた袋を持って戻ってきた刑事が比嘉にそれを手渡すと、比嘉は封を切って、中のスマートフォンを伊藤涼香の目の前に置いた。
「さっき言った通り、この場で操作して下さい」
「はい」
頷いた伊藤涼香は、メッセージボックスを開いてスクロールしたが、目当ての物が見つからなかった様子で、二度、三度とスクロールを繰り返した。続いて、自分のタイムラインを遡って見ている。アカウント名は手記を出版した時のペンネームだ。相当数のツイートとリプライで、一か月を遡るだけでも時間を要した。
「この人ですけど、アカウントを削除しているみたいです。DMは消えていました」
スマートフォンの画面上には、伊藤涼香がその相手に対して症状を簡単に説明している文章が表示されていたが、相手のアカウントは初期状態の意味をなさないアルファベットの羅列で、既にアカウントが削除されていることを示す黒い文字になっていた。
「警部。持って来ました」
その時、川島がノートパソコンを持って取調室に入ってきた。
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