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「伊藤さん。もうひとつお伺いします。これから電話の声を聞いて頂きますが、聞き覚えのある声かもしれません。もし声の主が分かったら教えて下さい」
「はい」
伊藤涼香が頷いたのを確認して、川島が通話データを再生した。
「はい、特別捜査本部」
「もしもし? 情報提供ですか?」
「伊藤さんは……犯人じゃないと思います」
自分の名前が出て、伊藤涼香が肩を固くした。
「失礼ですが、先にお名前とご連絡先をお教え願いますか? 外部に漏れることはございませんので」
「電話は、あの、持っていません。ぼ、僕の名前は鈴木太郎です」
その声を聴いて、伊藤涼香が反応を示した。
「今の喋り方……。多分神崎君です。神崎賢人君」
「高校の時同級生だった神崎君だね? 五年前にイジメられて、あなたに……。それが神崎君?」
伊藤涼香は、その質問に頷いたまま俯いた。
「伊藤さん、ありがとうございました。証拠品はもう暫くお預かりしますが、あなたは家に帰られるようにしましょう」
最後にもう一度比嘉が伊藤涼香に対して頭を下げると、彼女も比嘉に向かって小さく頭を下げた。
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