第三話

3/13
前へ
/50ページ
次へ
 川島がスマートフォンの画面に触れ、暫く撮影した後、再び画面に触れて録画を止めた。 「これを再生しますね。すると……」  再生された動画は、画面に触れた動画の最初と最後に大きくブレていた。 「今回は固定の仕方も簡単だったので大きくブレていますが、しっかり固定していたとしても、端末に直接触れる最初と最後は少なからずブレる筈です。……でもこれが何を示します?」  悩む川島をそのままに、比嘉は他の捜査員に別の質問を投げた。 「テトロドトキシン中毒はどの位で症状が出る?」 「はい。一般的に一〇分から四十五分とされています。川島君が言ったような編集をして投稿するには一〇分もあれば可能でしょう」  比嘉は暫く目を閉じて考えた後、自分の膝を叩いて「くそっ」と吐き捨てた。 「川島、この動画で俺達は最初に何を特定した?」 「え? ああ、はい。犯行日時と、殺害方法、それから犯人は『涼香』という女だと……」 「その全てが犯人の罠なんだよ。我々も、被害者も、見事に騙されたんだ」
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加