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「いや、しかし犯行日時は間違いないでしょう? 背後に移りこんでいるナイター中継もこの動画が上げられた時刻と合致して……。アリバイ工作、ですか?」
川島に対して、比嘉は「今頃気付いたか」と言わんばかりに嘆息した。
「この動画が、被害者本人によって撮影され、あたかも『涼香』という女が撮影したかのように作られていたとしたら、矛盾点がひとつある。毒が被害者のグラスにだけ混入されていたことだ」
「あの、大迫が伊藤涼香に恨みを持っていて、自分の自殺を伊藤涼香による殺人と見せかけた……ってのは考えられますか?」
川島が怖々と手を挙げて自分が思い付いた考えのひとつを口にした。
「状況として考えられん。忘れたか? 被害者の携帯は見つかっていない」
「そうでした……」
肩を落とす川島だったが、どんな意見でも出す川島を比嘉は気に入っていた。
「その矛盾点を解消できる人物がいる。川島、自分の手帳に書いてあるメモを見てみろ。今回の事件で、最初の方に取ってあるメモだ」
比嘉に柔らかく言われて、川島は手帳を捲った。
「警部……もしかして……」
「第一発見者。もっと疑うべきだったな」
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