第三話

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「だってさあ、発端が五年前のイジメでしょ? 五年も恨みを持ち続けて、今になって復讐するなんて。よっぽど計画してチャンスを待っていたのよ? 相当な忍耐力じゃない?」 「それだけ失った物が大きかったのさ」  正に五年前のイジメが原因だった。被害者の勤務していた工場の社長、谷本喜朗(よしろう)は、五年前のイジメの主犯格で、自殺した男子高生の父親であることが分かった。  比嘉の推理はこうだ。  谷本はある時、社員の大迫が「特定」をして楽しんでいることを知った。大迫が果たして彼の息子のことを「特定」したのかは定かではないが、当人だったとしても、そうでなかったとしても、身勝手な正義感で「特定」をして晒す者を恨んだだろう。  そして、大迫が女性に縁が無いのを利用して、彼に興味を示す女に成りすまし、更に、五年前のイジメをきっかけに、その後出した本で成功した伊藤涼香に罪を着せる計画を練った。伊藤涼香に対しては完全な逆恨みだ。
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