第三話

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「それは川島君に頼みました」  その言葉を合図にしたかのように、キャッチホンを知らせる音が鳴った。比嘉が一旦耳元からスマートフォンを離し、画面を確認する。川島からだ。 「川島から電話だ。一旦切るぞ」 「はい」  比嘉が素早く操作して耳元にスマートフォンを戻すと、すぐに川島の悲痛な声が聴こえた。 「警部、脇坂さんから電話はありましたか?」 「ああ、たった今聞いた」 「神崎君が伯父宅を出ています。丁度谷本が出たのと同じ三十分前に。まずいですよ、警部。神崎君が危ない」  比嘉は自身の詰めの甘さを悔いたが、悪いことは立て続けに起こった。谷本の車をたった一台で追尾していた脇坂は対象を見失い、パトカーを配備させていた神崎の伯父宅近くの三郷、三郷南、流山インターは全て空振りで谷本の車は通過しなかった。  比嘉が神崎の伯父宅前に先着していた川島と合流したのは、谷本が家を出て一時間二十分が過ぎた、九月一日の午前一時一〇分だった。 「流山でも降りなかったということは、我々がマークしていることに気が付いたんでしょうか? それとも余程用心深いのか……。神崎君を伯父さんの家から離れた所に呼び出したんでしょうね」
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