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「そうですか……。でも、賢人は人一倍用心深いですから。そんな危険があると思ったらこんな時間に出て行きませんよ。たまたま同じ時間帯にその人も出掛けたってことじゃないですか?」
伯父の言葉を聞いて、川島は玄関の階段を一段下がり、比嘉の耳元で囁いた。
「確かに言う通りですよ。自分で谷本の目から逃れる為にここまで来ていた賢人君が、まんまとおびき出されますかね?」
「そうかもしれんが、嫌な予感が最高潮で吐き気がしそうな位だ。万全を期して何もなければそれで構わんだろ。どっちにしろ、神崎君には話を聞かねばならん」
川島も比嘉の言葉に納得し、再び階段を一段上った。
「賢人君が出て行く前、電話が掛かって来ませんでしたか? 誰かに呼び出されるような」
川島の質問に、伯父は首を捻った。
「いや、家の電話には何も。でも、賢人の携帯ではどうだったか分かりません」
「賢人君は携帯を持ってるんですね?」
やはり電話を持っていないと言うのも嘘だったのだと川島は頷いていたが、それは嘘ではなかったようだ。
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