85人が本棚に入れています
本棚に追加
「はい。こちらに来てから私が持たせましたから。でも、最初にそちらから電話があった後、賢人に掛けてみたら電源を切っているようで繋がりませんでした」
伯父はそう言って電話番号を書いたメモを比嘉に渡した。最初に伯父宅に電話をしてから一時間近くが過ぎている。比嘉はその番号にダイヤルしてみたが、やはり繋がらなかった。
「駄目ですね。繋がりません。賢人君はこの家の車を借りて出掛けたのですか?」
比嘉が足元のガレージを指して尋ねると、伯父は頷いた。
「ええ、そうです。ナンバーも伝えておいた方が良いですよね」
「はい、お願いします」
伯父から伝えられた車種、年式、色、ナンバーを川島がメモしてすぐに車へ戻って無線で知らせた。
その様子を玄関口で見ていた比嘉が、神崎賢人の伯父に改めて頭を下げた。
「甥御さんに何かあったら私共の責任です。何か気付いたことがありましたら、何でも仰って下さい」
「そんな。これまで散々迷惑を掛けてきましたから……。本当に。はい……」
やはり恐縮する伯父の背後から、電子音のメロディーが流れてきた。
「ちょっと待って下さい。賢人からかもしれません」
最初のコメントを投稿しよう!