85人が本棚に入れています
本棚に追加
それだけ早口で言うと、比嘉は返事を待たずに、無線での交信を続ける川島が乗ってきた覆面の助手席に座った。
「川島、柏の葉公園に緊急走行」
「え? あ、はい!」
サイレンを鳴らし走る車内で、比嘉は再び携帯電話を耳に当てた。
「神崎君、君を殺そうとしているのは谷本だね?」
その言葉に驚いた川島が比嘉の方を見るのを、比嘉は右手で前を示して運転に集中するよう合図した。
「た、多分そうです」
「谷本から電話でそこに呼び出されたんだね?」
「あっ、あっ……。ナ、ナイフを持って……」
「神崎君? 大丈夫かい? 電話は切らないで。神崎君?」
緊張した様子の神崎に、比嘉も小声にして無事を確認した。だが、間もなく通話は途絶えてしまった。
「警部、神崎君は?」
「危ないのは間違いない。急げ」
「はい!」
比嘉が無線で応援を呼んだ三十分後には、無数の赤色灯が深夜の柏の葉公園周辺の樹々の葉を赤く染めた。
最初のコメントを投稿しよう!