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「警部、どうかしましたか? 谷本ですが、もう息が無いようです。神崎君を殺そうとして、逆にやられたんでしょうね。正当防衛とはいえ、殺してしまったとなると……」
「このまま悪魔を野放しにするわけにはいかん……」
「え? いや、ですから谷本は……。ちょっと、警部!」
引き揚げられた谷本の方へと走り出した比嘉を、川島も走って追いかけた。
「警部! 待って下さいよ!」
川島の要望に応えぬまま、写真を撮る鑑識の間を割って入った比嘉が谷本の遺体を見下ろすと、そのまま赤く染まった谷本の作業着へと手を伸ばした。
「ちょっと! 困ります」
鑑識の制止に何とか手を止めた比嘉が、谷本の胸ポケットの膨らみを指した。
「このポケット、中に時計が入っていると思うんだが。ちょっと出してみてくれないか?」
比嘉に言われて、鑑識が嘆息しながらも写真を撮った後、胸ポケットから懐中時計を取り出した。
「止まってますね。水に濡れて壊れたんでしょう」
その懐中時計の針は、一時一〇分を指していた。
比嘉は握りしめていた神崎の伯父の携帯電話を見た。神崎からの着信履歴は一時一六分となっている。
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