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「勾留期限のギリギリまでな。その間に大迫和馬殺しの方で、まだ裏を固めなきゃならないこともある。逃げ道のひとつも与えないようにしないと駄目だ」
「そうですね……。そうだ、警部。神崎を怪しいと思ったきっかけ。まだ答えを教えてもらっていませんよ」
「携帯だよ。俺と電話で話していた状況から格闘になったとして、携帯片手にナイフを持った奴と争って、そのナイフを奪い刺し返せるか?」
比嘉の返しに、川島は口をへの字にして天井を見上げた。
「まあ、無理でしょうね。でも、格闘の後にまた携帯を拾ったってことも考えられるじゃないですか」
「それでもおかしい。携帯を拾うって行動に出た位なら、その携帯で連絡するだろ?」
「あ、確かにそう言われてみれば。……はあ、自分もまだまだですね」
比嘉は再び沈黙している。
「しかし、よくも滑らかに嘘を吐くもんですね。あの独特の喋り方が、いいカモフラージュになっているのかな」
神崎が続ける嘘の供述の中で、比嘉が唯一真実だろうと感じた言葉があった。
「僕は伊藤さんが好きでした。小学生の時に付き合っていたこともあります」
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