第四話

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 伊藤涼香の部屋の前で谷本を見たのは、そこに偶然通りかかって見たのか、伊藤涼香の部屋に行こうとしていたのかを尋ねた時に返ってきた答えだ。伊藤涼香に確認を取ると、付き合っていたと言っても、時々一緒に下校した程度らしい。それでも伊藤涼香は、神崎の気持ちは知らなかったと答えた。  神崎が一旦伊藤涼香に捜査の目を向けさせたのは、窮地に立たされた伊藤涼香を、神崎の手で救ったという事実を作る為だったのだろうと比嘉は考えていた。そうやって彼女の気を引こうとしたのだ。常人の考え付く方法ではない。  たまに見せる神崎の怒りに燃えた目が、比嘉の背筋を凍らせた。  神埼賢人に照準を絞って裏付け捜査を進めるうちに、これまで乏しかった大迫殺しの証拠も次々に出てきた。コンビニでワインを買う神崎の映像、中古スマートフォンを売ったリサイクルショップ店員の証言、谷本の工場方面へ紙袋を下げて歩く神崎の映像。
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