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神崎は、証拠のワインボトルとグラスをすり替え、神崎が想いを寄せる伊藤に一旦捜査の目が向くように、彼女のゴミ袋から拾っておいた歯ブラシを迫田の部屋に置いた。そして、すぐに伊藤の無実を神崎が証明することで彼女に恩を売ると同時に、今度は自分をイジメていた同級生の親である谷本に捜査の目を向けさせた。
そして最後は正当防衛を装い、谷本を殺した。
動機はただひとつ。伊藤涼香の気を引く為。その為だけに神崎賢人は、恨みも何もない二人の人間を殺害した。
「やっぱりきつい事件だったな……」
嘆息して立ち上がった比嘉が、綴じられた調書の表紙に目を落とした。取り調べの最後に聞いた神崎賢人の言葉と、不敵な笑みが脳裏に蘇る。
「『伊藤さんは……犯人じゃないと思います』……クックックッ、どうだった? 刑事さん。僕の言ったこと、本当だったでしょ? フフフ……ハハハハハ」
乾杯・了
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