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愛されて育った子
結乃は昔から取り立てて取り柄もなく、勉強も運動も可もなく不可もなく、極めて平凡な子だった。
容姿も特段に美人でもなければ、忘れられないような不細工でもない。大衆の中に紛れてしまうと忘れられてしまうような子だった。
そんな結乃だったが、彼女の両親だけは、結乃に特別な愛情をくれた。結乃だけを唯一無二の存在として扱い、大切に大切に育ててくれた。
だから結乃は、自分のことを〝取り柄がない〟と卑下することもなく、ひねくれることなく真っすぐ素直な人間に成長した。
両親のくれたとても深く温かい愛情は、結乃の中に他人や小さな子猫にまで思いやる心も育ててくれた。結乃の常に相手の立場に立って考えてあげられる優しい気質も、両親からの賜物だった。
特に、父親からは溺愛され、猫可愛がりされるほど過度なものがあったが、素直な結乃はそれを普通の女子のように鬱陶しく思うこともなく、本当に父親のことが大好きだった。
「お父さんみたいな人とケッコンする」
幼い頃の結乃は、よくそう言って父親を喜ばせていた。それほど、結乃の一番近くにいて大事にしてくれる父親は、結乃の中に涵養された理想とする男性像だった。
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