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同じ会社に同期入社して、結乃の切ない想いが再燃する。けれども、敏生は遠い人のままだった。
誰もが思わず二度見してしまうようなルックスの敏生。それに加え、入社直後から頭角を現し、たったの三年で社内でも一目置かれる存在になった。そんな敏生に比べて、結乃はどこにでもいる一社員。悲しいくらい平凡だった。
両親の深い愛情のおかげで、自分を〝つまらない〟なんて思うことなんてなかったけれど、こんなに完璧な敏生を心に宿すと、自分が雑多で粗末な人間に思えてくる。
こんなちっぽけな自分では、敏生と想いを通わせることはおろか、願望を抱くことさえおこがましいと思った。
結乃はそんなふうに敏生への想いを合理化して、自分の恋心が叶えられない切なさを、必死に慰めていた。
だけど、ほんの些細なきっかけだった。敏生と言葉を交わす機会があり、敏生も結乃のことを覚えてくれていた。それから、会うたびに少しずつ言葉が増えていき、普通の友達のように会話ができるようになった。
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