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でも、結乃は平静を装い、気づいていないふりをした。
何も悪いことや、後ろめたいことなんてしていない。堂々としているべきだと思ってはいたけど、怯えてしまった心が体を強張らせてぎこちなくなる。
席に戻ると花田と小池はもう既に昼食を食べ終えていた。 結乃のランチはまだ少し残っていたが、結乃は座ることなく二人に声をかけた。
「もう行こっか」
「ああ、……うん」
二人も立ち上がり、食べ終えた食器のトレーをを返却口に持っていく。周囲からの視線の違和感に二人も気づいたとき、ざわめきの中から聞こえてきた囁きに反応した。
「芹沢さんと、ただ高校が一緒なだけなんでしょ?」
「それなのに彼女ヅラしてるんだって?」
無反応に徹していた結乃と違って、二人は鋭い視線で周りを見回し、誰とは判らない声の主を牽制する。
社員食堂を出るやいなや、二人は憤慨を口にした。
「許せない!絶対、川本さんの仕業だよ!」
「有る事無い事、他の部署の人にも言って回ってるんだね」
確かに、結乃と敏生が高校の同級生だと言うことは、あの合コンにいた人しか知らないことだ。話の伝わり方に悪意が感じ取られることからも、噂を流した張本人は川本と考えても無理はなかった。
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