第二章 猫の首に鈴

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 しろくんは話を聞き、信じられないとばかりに大きな目をさらに大きくしていた。 「そんな……僕たち以外にも――」 「えっ、どういう意味?」  聞き返しても、しろくんは何も答えなかった。ミサンガについて知っていることがあれば教えてほしいといっても、知らないとしかいわない。いつもニコニコしている顔が、口をかたく引き結んでいる。  こういう場合何を聞いても、いわないような気がする。  とにかく、あいるさんの中での優先順位はいま、ミサンガである。あやちゃんに連絡をとると、運が悪いことに葵くんは熱を出したという。  そんな状況で、ミサンガを思い出してなんていえるわけがない。私は何もいわず、おだいじにといって電話を切った。さあどうしよう。  しろくんが、近よってきて、うなだれる私の顔をのぞきこむ。 「ミサンガは、葵くんの体調が回復するまで無理ですね」  子育てって、驚くほど自分の時間を持てない。それに、あやちゃんは暇さえあればお菓子のことを考えている。その貴重な時間で、ミサンガを思い出してというのは酷なのかもしれない。 「プチポワンクロックだけでも、みつかればいいんですけど」
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