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信二が目覚めるとそこは病室であった。信二の左手には点滴のチューブ、胸には電子機器が取付けられていた。
「ミカエル?」
信二は小声で天使の名を呼んだ。
「ハイ?」
ベッドの横で心電図をチェックしていた看護師が顔をあげた。
「意識が戻られましたか? ご自分の名前は分かりますか?」
「神尾信二……」
「良かった! 意識障害もないようですね」
切れ長の瞳に安堵感をまとわせ、微笑んでいるその顔……
憧れの君がナース服で佇んでいた。
「すいません、このたびは私のせいでこのような目に合わせてしまって……」
「あなたは?」
「あっ、失礼しました。私、天使ミカと申します。この病院のナースです」
「あの男は?」
「お恥ずかしい話ですが、私のストーカーなんです。看護師をしていると、患者さんに異常な好意を持たれることもありまして…… 勘違いなさる方も多いのです」
「それで、俺の状態は?」
「犯人の刺したナイフが心臓静脈を傷つけていたので、一時期危篤状態でしたが、手術も成功してもう心配ありません」
「なるほど、それでどれくらいで退院できます?」
「これから傷の状態を見つつリハビリですが、今はご無理しないでください。『ローマは一日にしてならず』私もお手伝いいたします。コツコツやりましょう」
憧れの君、ミカはイタズラっぽく微笑んだ。
「大丈夫です。あんなにジムで一所懸命な神尾さんですから、きっと早く良くなります…… えっと…… その…… 以前からずっと、ジムであなたを見ていました……」
白衣の天使は、耳タブまで赤くした顔を両手でおさえた。
そういえば、天使の矢に心臓をつらぬかれたら……
(了)
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