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――――――――……
「痛い…痛いって!押すなよ、南!」
「いいから!さっさと帰ってよ!!」
玄関で靴を履く圭に「早く帰れ!」と、力任せに押す私。
あれから、悪態づいたお互いの態度がきっかけで口論になり、今に至る。
「だから帰ってるって。マジお前、ふざけんな!」
背中をぐいぐい押しながら、玄関の扉を開け、早く帰れと誘導してやる。
玄関から圭の足が全部出た所でコイツの動きが止まった。
反動で思い切り、圭の背中に鼻をぶつけた私。
嗚呼、格好が悪い。
「何よ。急に止まらないで…」
文句を言いながら、圭を見るとなんだか表情がおかしい。
「南チャン……マンションの名前ってエトワール?」
「え?うん。そうだけど」
「ここ、何階?」
「……?三階だけど…」
「まじで…」
明らかに脱力した様子の圭。なんだ?
何度か、「まじかー、まじかよ…」と繰り返していたが、はぁー…という深いため息の後、圭がこっちを振り向いた。
満面の笑みで、否、よく見ると引きつった不自然な笑顔で。
そして……、
「南チャン。ここ、俺の家」
ヨロシクネ、と。
隣の扉を指差して、そう言ったのだった――――…。
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