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コイツが笑っている様子をおそらく怪訝な表情で見ていると、ゆっくりと顔を上げた圭と目が合って、整った顔立ちが私を見つめる。
―――な…、んだろう?
どういうわけか、目が逸らせなかった。
かっこいい……とか思っちゃったけど、それは客観的な見解であって、私の好みではない…と思う。絶対!
なのに、熱をもったような眼差しに射抜かれると体が固まってしまって、ただただ真っ直ぐに見つめ返すしかなくて……。
「……ねぇ、南チャン?」
「………え?」
低く響いた声に心臓が大きく弾んだような気がした。
彼の視線は今もなお、私を縛っていて…。
「…………」
「………っ」
静寂の中、心音だけが大きく聞こえてくる。
何で?……どうしよう?
なにこの空気?何言われるの?
なんか…緊張してしまう。
なんでこんなにドキドキしているのかは分からないけど…。
体も動かなくて、声も出せなくて……。
目も逸らせず、真っ直ぐな視線を送り続ける私を覗き込むように近付いたその顔は綺麗に微笑むから、ますますドキリとしてしまって……、
「料理、教えてあげよっか?」
「―――ッ…」
最悪!!コイツ!!!
放り投げられた予想外の言葉に緊張は一気に解けた。
いや、予想なんか何もしてなかったけど!
まさか、そんな言葉がくるとは思わなかっただけで…!!!
睨むように圭を見ると、胡散臭い笑顔。
私、なんでこの顔に最初から気付かなかったのかなぁ!?馬鹿じゃない!?私!!
一瞬でもこの男をかっこいいとか思ってしまった自分。
目が合っただけで随分と動揺した自分。
しかも、不味いとは言わずにそれを伝えられた言葉で急に恥ずかしくなる。
顔が熱くなるのが自分でも分かって、隠れるように下を向いた。
そんな私の様子を見て小さく笑っている圭。
聞こえてくる笑い声はますます羞恥心を煽るけど、強がって。
………というか強がるしかなくて。
「あのね、料理は昔からにが…」
「苦手で?」
その声に思わず顔を上げる。
駄目だ…。動揺しすぎ…。
こんなの、コイツのこと意識してるみたいじゃない…。
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