その2 いつも通りですよー!!

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強気にでたいがうまくいかない。 「もういい!要らないなら、返して!!」 「いるいる。うまいよ、この蒲鉾〜」 おいコラ!知ってんだろ!? 蒲鉾は切っただけなのよ!! 思い切り睨み付けてやったが、効果はなく、軽く笑顔で流された。 「懐かしいよな、この味…。何ともいえない、さ。中学のときも…」 「もうやめて!はっきり不味いって言えばいいでしょ!!」 若干、涙目になってきたけど、どうにもならない。 それでも強気に遮ると、困ったような声色で……、 「……不味くはないよ」 「……っ!」 その反応が意外で思わず見ると…、 「でも、マジ上達してねぇー」 我慢できずに笑い始めた圭を前に、なるほど、殺意とはこの感情のことか…と拳を握り締めたのだった。 ――――――…… 「ねぇ、南?」 「………」 「南チャン?」 「………」 「おい、ブス!」 「誰がブスよ!!」 さっきから圭を無視し続けていたが、子供じみた挑発にあえなく撃沈…。 じろりと睨むと「お前しかいねーじゃん」と笑っていて。 あー、むかつく!ホントうざい!! やっぱり、昨日、廊下に放置しておくんだった! そうだよ。こんなの部屋に入れるんじゃなかった。やっぱり私、馬鹿だった…。 後悔する私をよそに、圭は急に真面目な顔になるから、なんだろう?と思う。 「昨日、俺って外の廊下で寝てたの?」 「……え?うん」 「外って外の廊下だよ?」 「うん、そうだよ。なんで繰り返してんの?」 「……いや、驚いて」 「うん、私も驚いた。なんで寝てたの?鍵がなかったから?」 「いいや、たぶん違う。昨日、星が綺麗だったから家に入る前に見てたんだ。そこから記憶がない…」 「ああ、星…」 コイツも見てたんだ。そういえば小学校の頃、一緒に天体教室に行ったこともあったな…と思い出した。 「……なんだよ」 この沈黙をどう勘違いしたのか、照れた様子の圭。 何なの?気持ち悪い。 別にロマンチストとか思ってねーよ。
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