その2 いつも通りですよー!!

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―――しばしの沈黙の後、 「俺ね、携帯も財布もないの」 家の鍵もね。と思ったが、敢えて黙る。 どう来るつもりだ、と警戒態勢。 圭は真っ直ぐな眼差しで私を捕らえると……、 「そんな状態の俺を放り出さないでよ」 お願い…と付け加えながら、魅力的ににっこり微笑んだコイツを見て、ああ…、本当に消えてくれ…と思った。 自分の容姿の良さを認識した上での行動が面倒すぎる。 しかし、その行動に白旗を揚げかけている自分。 眉間にしっかりと寄った皺を押さえながら、流されかけている自分自身に必死に抵抗する。 不意に、中学生のコイツが優れた容姿を使って、何でも思い通りにしていたことを思い出して苛々した。 そのイラつきを原動力に声を絞り出す。 「い、嫌だ…」 「あっ!12時半?」 「えっ!?嘘っ!?」 必死の抵抗もむなしく空振りし、鞄を掴んで一目散に玄関に向かわざるを得なくなった私…。 「いってらっしゃーい。気をつけてね♡」 玄関の扉を開け、振り返って中を見ると、満面の笑みで手を振る圭の姿があった。 ありえない、アイツ!ほんっと大嫌い!!
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