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ぼんやり棒立ちの私に…、
「颯には内緒な?」
「え…、うん。でも…」
「なんだよ。別に騙すわけじゃないだろ。多分、嘘はついてない」
「…………」
多分…って…。しかも、もう嘘なんじゃ…。
困って圭を見ると。
「あー…でも、聞かれたら、全部自分で作ったって言えよ」
「……完全に嘘じゃん」
圭はおかしそうに笑うと「俺が恥ずかしいからー」と言ってキッチンから出ていった。
鍋を温めて、盛り付けて…、それを持ってキッチンを出ると、丁度、圭が高田君に「じゃあ、帰るから」と言っているところだった。
どこに帰るんだろう?と一瞬思ったが、まあいい。
それよりも、高田君が「圭、いてくれない?」と言いはじめるから、なんで?と聞き耳を立ててしまう。
これには圭も戸惑った様子。だよね…、私も同じなんだけど…。
「なんで?二人で食べろよ」
「んー…、今、二人きりになると喧嘩になりそう」
マズイ…この発言には本気で泣きそう。
今日の私の涙腺おかしいんじゃないかな?と涙をこらえる。
「えーー」と渋っていた圭だが、チラリと私を見ると……、
「仕方ないなー。南ー、俺も食べていい?誘われたんだけど」
「………べつに、どっちでも。でも、自分でやってね」
わざと不機嫌に返す、可愛くない私。
いやいや、コイツに可愛さを見せてどうする?
だけど、「お前ら、俺に当たる気だろ?」と茶化す圭に、少しだけ感謝した。
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