その3 あっれ?え??誰かいましたっけ?

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「だけど…、だからってなんで南ちゃんの家の前で寝てたの?」 「俺の家、この部屋の隣だったんだよ。だから、自分の家の前で力尽きて…」 「は?隣?なに?ストーカー?」 「ちっっげぇーよ!」 「偶然ね。最悪な偶然ー」 私の無気力な返答に反応して、高田君の視線が圭から私に飛んできた。 「だいたい南ちゃんも圭が廊下で寝てたからって、なんで自分の部屋に泊めたの?知ってる奴とはいえ、女の子なんだからさぁ。もっと自覚持ってよ…」 そんな自覚は勿論ないけど、私だって好きで入れたわけじゃない。 「最初は無視しようと思ったよ。だけど…、コイツが寝ながら“みなみ”って呼んだから…」 「………え?」 思わず乾いた声を出して動きを止める圭。 何?私、何か変な事言った?? そして、一瞬の沈黙の後、真顔で確かめるように……、 「………俺、本当に言ったの?」 「うん」 だから何だと頷いてやった。 じっと圭を見ている高田君に気付いて、圭が目を逸らす事なく真顔で答える。 「違う、南じゃない」 「言ったよー」 「だから南じゃなくて……、あーーー!!もう!!」 圭はそこまで言って、勢いよく立ち上がった。 「帰る」 「逃げんの?」 「だからお前じゃねぇよ、ブス!」 「だから誰がブスよ!?」 「えー?鏡ナイの?この家?えー?」 キョロキョロとわざとらしく鏡を探す仕草に苛々する。 「ムカつく!!」 「南ちゃん、落ち着いて」 立ち上がって殴りかかってやろうとしたが、腰に回された高田君の手で阻止された。
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