その1 だって、怖かったから

3/4
前へ
/60ページ
次へ
「お腹すいたよねー」 爽やかに微笑む彼を見て胸が躍る。 今日も爽やか。最高に格好いい!! 高校は制服だったから、週末に会った時くらいしか私服を見ることができなかったけど、今月からは大学生。 毎日、お洒落に爽やかさを引き立てる私服を着こなす彼にますます惹きつけられて、私の格好大丈夫?…と妙に焦って自分の服装をチェックした。 今は二人並んでメニューを見ているが、正直、私の興味は隣の彼。 今日は何にしようか?と考える彼の横顔をぼんやりと眺めていると……、 「これだけメニューがあると卒業まで毎日、ここで食べそうだよね…」 苦笑いを含んだ彼の言葉に急に現実に引き戻された。 この大学は学部によれば徹夜は常であるためか、メニューも豊富で栄養もきちんと管理されているらしい。 それもあって入学式から一週間たった今まで、毎日ここで昼食、夕食を食べ続けていた。 でも、卒業まで毎日…っていうのは嫌かもなー。 そんなことを思っていると、つい、頭の隅っこにあった考えを口にしてしまって……、 「でも、引越しの荷物が片付いたら、私が作ったりもできるし…」 「南ちゃん、料理得意!?」 言い終わらないうちに言葉を被せられ、その勢いに負けて……、 「う、うん?……得意ほどじゃないけど…」 しまった…。 控えめな、得意ですよ♡アピールをしてしまった…。 実際のところ、自慢じゃないが、料理は得意じゃない。 特に味音痴というわけでもないはず。 だけど、昔から何を作ってもおいしいと言われたことがないのだ。 一人暮らしが始まったし、そのうち練習しようと思ってはいたけど、何であんなこと言ってしまったんだろう!?? 壁に何度も頭を打ちつけたい気分でいっぱいの私をよそに高田君は、「南ちゃん、料理得意なんだ!?得意なメニューは何?高校の時は全然そんなこと言ってなかったから知らなかったよね!」と、大喜び。 本当は得意じゃないからね…。そりゃあ、そんなこと言わないよ…。 不自然じゃないように笑顔で質問をかわしながら、注文したパスタが来た瞬間に滑り込むように席に着いた。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加