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01
『供給電圧安定。最終工程に入ります。』
世話しなく動く数値やメーターを映した幾つもの機材。そこから伸びたケーブルが、開発室の床中を這っていた。時折ケーブルの表面に散る火花が、その電圧の強さを感じさせた。
床を這う全てのケーブルが、開発室中央の椅子へと収束していた。そこには一体のロボットが横たわっていた。まるでリクライニングシートで眠る少女のように。
★
少女の姿をしたロボットが、跳ねるように背中を反らせた。その全身に電光が走ると静寂が訪れた。
ゆっくりと瞼を開いたロボットは、目覚めたばかりの少女のように、瞳だけを動かし覚醒した。体を起こすと、今度は首を動かし部屋中を眺めた。そして立ち上がり自分の姿を見たロボットは、目的を持って視線を巡らせた。
「……」
ロボットが視線を止めた先に、白髪交じりの男が倒れていた。それはかつて、この施設を建てた男だった。倒れてからどのくらい経つのか、もう息がない事だけは確かだった。
「ハカセ?」
少女の姿をしたロボットは、思考と言うデータをまさぐった。
「博士。博士起きてください」
男の傍らに膝をついたロボットは、やさしく男の肩を揺すって語りかけた。それが意味のない事だとは分かりもせずに。
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