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「博士がくれた……心?」  ページをめくる度に、博士を思い出す度に、ロボットは胸を抑え泣いた。自分に何が起きているかさえ分からなかった  記録にない記憶を心と呼ぶのか、内から溢れ温かく流れるものが心なのか。答えを導き出さずとも、これが博士がくれた心によるものだと感じることができた。それはAIの考えにも及ばぬ、体の何処かにあるのだと。 「博士。受け取りましたよ心を」  アンドロイドは二度と動かない男の体を抱きかかえた。男が生きていれば、彼女の作ったAIに自分が心を与えたアンドロイドは、正真正銘ふたりの娘だと思えたかもしれない。 「博士。博士」  自分の熱を分け与えるようにアンドロイドは男の体を抱き、髪を頬を優しく撫でた。しかし熱は伝わるどころか、アンドロイドに異変を与えた。  いつしかアンドロイドは、感情をまとったように淡く発光していた。制御できない感情が全身に流れだし、あちこちで火花を散らせた。  アンドロイドには湧き出す感情を抑える力も、心を制御する術もなかった。数値化できない心というエネルギーは、アンドロイドにはあまりにも大きすぎた。  やがてアンドロイドの淡い輝きが強く瞬いた。アンドロイドを中心に発生した波動が施設を震わせ、アンドロイドは輝きと共に動力を失った。
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