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 それは観測する者があれば、どんなに美しく見えただろう。音もなく太陽が瞬いた。まさに一瞬のこと。太陽から放射線状に放たれた熱波(フレア)は、宇宙空間へと広がり果てなき旅を始める。  熱波は早くもなく遅くもなく、概念のない速度で広がってゆく。名もなき星々を越え、やがて地球と呼ばれた惑星を越え、地球よりも小さな星に到達した。その小さな星を包み込んだ熱波は、荒れた大地にただポツンとあった半球(ドーム)形の建物へと降り注いだ。 ☆ 『システムを再起動します。』  突然の熱波でシャットダウンしたシステムが、デジタル音声と共に動き出し、半球形の施設内に順々と明かりが点灯した。 『バックアップ異常なし。規定の工程に入ります。』  音声は廊下を響き渡り、居住区、研究室、開発室と施設中を駆け巡った。しかし施設の中には、それを聞く者の姿は何処にもなかった。その施設は、たった一人の男によって造られた。人類が切望したアンドロイドの開発をする為だけに。  人類が自傷的衰退をする中で、AIの進化はめざましかった。共存できるアンドロイドの誕生は、人類にとって救いであり悲願だった。しかし、いくら優れた脳や体を作れても、感情だけは研究さえおぼつかなかった。男はそんなアンドロイドの研究開発に、この地で生涯を捧げた。  やがて地球上からは、目的を失ったことにも気付かず動き続ける人型ロボットを残し人類が消えた。
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