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俺は無一文のギャンブル狂。今日も路上で小石を蹴飛ばしながら日課の散歩をする。
すると、足元にボロボロの本が落ちているではないか。そのタイトルは『身震いするほど儲かるギャンブル術』。身震いするほど? 震えてるのは俺の財布だけだが、背に腹は代えられない。とりあえず拾ってみた。
家に戻り、その本を開くと、まるで宝の地図を見つけたような気分だ。「これだ! これで俺も一発逆転だ!」と、テンションはマックス。
さっそく友人に金を借りて、どうにかラスベガス行きの航空券を手に入れた。
ラスベガスの煌めくネオンは、まるで俺を歓迎しているかのようだ。カジノに入り、本に書かれた秘技を駆使すると、あれよあれよという間にチップの山が築かれていく。ディーラーは冷や汗、周りの客は口をあんぐり。俺は鼻歌まじりにチップを積み上げる。
しかし、その時、背後から低く冷たい声が聞こえた。「帰れ。もう、二度と来ないでくれ。君の顔はしっかり覚えたからな」
振り返ると、ロッキー山脈のようにデカい用心棒が睨んでいる。「はいっ!」と素直に答え、10億ドルを抱えてカジノを後にした。
手にした大金で俺は豪遊の限りを尽くした。高級車を買い、高級時計を両腕につけ、豪邸を建て、ペットにライオンを飼う始末。友人たちは「お前、どうしちゃったんだ?」と心配するが、俺はただ笑って「ただの豪遊さ」と返すのみ。
しかし、そんな生活も長くは続かない。10億ドルなんて、豪遊しようと思えばあっという間に消えてしまうものだ。再び無一文となった俺は、自分の浪費癖に呆れながら、いつもの散歩道をとぼとぼと歩いていた。
すると、またもや足元に一冊の本が落ちている。『軽いノリで全身整形してみませんか?』。いやいや、軽いノリで全身整形って! でも、待てよ。これも何かの縁かもしれない。「これだ!」と再び閃いた俺は、すぐに整形外科の門を叩いた。
数カ月後、借金を山ほど抱えながらも、俺はまるでモデルのようなスタイリッシュな外見を手に入れた。鏡を見るたびに「俺って素敵」と自画自賛。これならあの用心棒にもバレないはずだ。
再びラスベガスへ舞い戻り、カジノで再び大勝ち。ディーラーはまたもや冷や汗。俺はニヤリと笑い、チップを積み上げる。
しかし、勝利の余韻に浸る間もなく、背後からあの声が再び響く。
「帰れ。もう、二度と来ないでくれ。君の顔はしっかり覚えたからな」
振り返ると、あの用心棒が険しい表情で立っている。
「はいっ!」と返事をし、またしても10億ドルを抱えてカジノを後にした。
懲りない俺は、またもや豪遊の日々を送った。今度は宇宙旅行にまで手を出し、火星でゴルフを楽しむ始末。しかし、どれだけお金があっても、使えば無くなるのは当たり前。再び無一文となった俺は、自分の学習能力のなさに呆れ果てながら、散歩道を歩いていた。
すると、突然見知らぬ男性が話しかけてきた。「君、めちゃくちゃかっこいいね。モデルに興味ない?」
「え、俺がですか?」
「そうさ。君なら世界を席巻できるよ!」
まさかのスカウトに、俺は二つ返事でOKした。だって、もう他に道はないし。
数年後、俺は世界的なスーパーモデルとなり、ファッションショーでランウェイを闊歩していた。ギャラは天文学的数字、どれだけ贅沢をしてもお金は減らない。
そしてある日、ラスベガスのカジノでファッションショーが開催されることに。ステージに立つ俺を、あの用心棒が客席から驚いた顔で見つめていた。
(了)
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