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第六話
一旦日野署に戻った比嘉は、運転を脇坂に任せて現場マンションに向かっていた。別車両では、戸塚が椛を乗せて追従してきている。比嘉が助手席で手にしているタブレットには、鑑識から送られてきたデータが表示されていた。
「どうですか、警部」
ハンドルを握る脇坂が、顎をさすりながらタブレットを操作する比嘉に問いかけた。
「やはり他殺には見えないな」
比嘉はそう結論付けた理由を脇坂に語った。
玄関マットに付いた傷の形状から、まず花瓶が先に落ちて、その上に梓の頭が花瓶にぶつかり、その衝撃で花瓶が割れたと判明している。更に、花瓶には被害者の指紋以外新しい指紋は付いておらず、付着していた埃などから、指紋を拭い去ったような形跡も見られない。
「死亡推定時刻はどうです? 昨日の段階では、薮田君がピザを届けた時までは生きていたという認識でしたけど」
「問題はそこなんだ。救命士が来た段階で、死後硬直はまだ始まっていなかった。この寒さで死後硬直が遅れていたと考えても、死後二時間は経っていなかっただろうという見解だ」
救命士が現場に到着したのは午後一時。その二時間前であれば、午前十一時だ。
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