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比嘉に言われて、川島の表情が曇る。決してその言葉に気分を害したわけではない。自分を被害者の立場に当て嵌めて考えた時に、釈然としない思いが湧いたのだ。
「確かに……なんだかモヤモヤしますね。宅配ピザと、被害者の格好がどうもちぐはぐです」
川島は、スマートフォンに遺体の写真を再び表示させた。四枚というピザの枚数だ。自室でホームパーティーでも予定していたとすれば、きちんとした服装でいるのに不自然さはない。だが、マフラーと手袋までは必要ないだろう。
「他の家で食べるなら、その場に配達してもらうのが自然ですよね。この寒空の下、屋外で食べるはずもないですし」
疑問が浮かび上がるだけで、解答がどこにも見当たらない。ギブアップを告げる視線で川島が比嘉を窺い見たが、比嘉も首を横に振った。
「俺にも分からんよ。だが、今はそれで充分だ。これは単純な事故じゃない。必ず第三者が関わっている」
比嘉は気分を変えるかのように、携帯を取り出して電話をかけ始めた。呼び出した相手は、すぐに電話に応答した。
「どうだ、帰ったか?」
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